未来のお金 2019 6 30

書名 いま知っておきたい「みらいのお金」の話
著者 松田 学  アスコム

 暗号通貨(仮想通貨)の登場は、
「そもそも、お金とは何か」ということを考える機会になったと思います。
 ある時、宇宙人が地球にやってきて、不思議に思ったでしょう。
「なぜ、地球人は、そんなに紙を大事にするのか。
確かに、紙には精巧な印刷があり、数字が書いてあるが、
それが、そんなに重要なのか」
 これに対して、地球人は、こう反論しました。
「この紙を銀行に持っていけば、金貨に替えられる」
 宇宙人は、こう思ったでしょう。
「なるほど、その紙は、金貨に替えられるという証書なのか。
確かに、地球では、金は産出量が少なく、貴重なものだ」
 その後の地球の歴史では、
紙幣を銀行に持っていけば金貨に替えられるという制度はやめてしまった。
 このような制度があると、無尽蔵に紙幣を印刷できなくなるからだった。
世界各国は、「お金がなくなれば、お金を印刷すればよい」という誘惑に勝てなかった。
 しかし、これでは、無尽蔵に紙幣が増えすぎて、インフレを招く恐れがあった。
そこで、「デフレ」というシステムを考えたのです。
 かつて共産主義国と呼ばれた国々を資本主義経済に参入させたのです。
このような国では、低賃金で大量に商品を生産するという傾向があるからです。
 もともと、このような国は、「計画経済」だったので、
需要を見ながら商品を生産するという発想はなく、
やみくもに商品を生産したのです。
 こうして、世界レベルでは、紙幣よりも商品のほうが多くなってしまったのです。
こうなると、作りすぎた商品の在庫処分のために、値引きが常態化してしまいました。
これは、紙幣の側から見ると、「デフレ」に見えます。
 しかし、これでは、ある種の不安があるかもしれません。
かつての共産主義国の人たちが、需要と供給という資本主義を学んで、
需要を見ながら商品を生産するようになったら、どうなるか。
 当面の間、そういうことはないでしょう。
彼らは、運転資金を確保するために、大量に商品を作り続けるでしょう。
たとえ、赤字で生産しても、日々の運転資金は確保できるからです。
政府も、共産主義的な発想で、融資や補助金を供給するのです。
こうして「ゾンビ企業」は永遠に生き続けられるのです。
そして、デフレも永続するかもしれません。
 ところで、フェイスブックは、
「フェイスブック」というコミュニティの中で通用する暗号通貨を発行するという。
その暗号通貨は、「リブラ」という名称になるそうです。
そして、リブラという通貨の信用を高めるために、
裏付けとなるドルを用意するという。
 なんだか、かつての中央銀行のような発想ですね。
かつて、中央銀行は、紙幣の信用を裏付けるために、
膨大な量の「金」を保有していたのです。
 しかし、中央銀行の歴史を見ればわかるように、
フェイスブックも、ドルという裏付けは、やめてしまうかもしれません。
こうなると、フェイスブックも、リブラをいくらでも発行できます。
これも、中央銀行の歴史でしょう。
 こうなってしまうと、発行上限が定められている「ビットコイン」のほうが、
価値が高くなるのでしょうか。
ある時、発行上限に達すると、ビットコインは発行されなくなるのです。
こうなると、アンティークコインと同じになるのでしょうか。
博物館に行くと、アンティークコインが展示されています。
 無尽蔵に発行される紙幣。
無尽蔵に生産される商品。
それに対して、有限のビットコインという構図でしょうか。
 宇宙人は、暗号通貨の登場を見て、
「だんだん、我々の文明に近づいている」と思うのでしょうか。
 今のところ、フェイスブックのリブラがうまく行くかわかりません。
しかし、歴史の転換点を作ったことは、間違いないでしょう。

























































































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